二つの『舞姫』解説編
前の記事、「二つの『舞姫』」の解説編だよ。
答えと文学史の勉強にちょっと役立つコラムを載せておくよ。
芥川龍之介の『羅生門』、夏目漱石の『こころ』、そして森鴎外の 『舞姫』は、普段文学作品になじみがない人でも読んだことがある作品かもしれない。
というのも、それぞれ高校の国語の教科書の1年、2年、3年に掲載されているから。
もしかしたら最近は教科書に『舞姫』が載ってなかったりするかもしれないけど、文語*1で書かれた堅苦しい文章に面食らったっていう人もいると思う。
さてそんな『舞姫』だけど、同じタイトルの作品は別の文豪も書いていたんだ。
作者は誰かっていうと、昭和の作家川端康成。
『伊豆の踊子』や『雪国』といった旅の道中であった女性との交流を描いた作品が有名だけど、戦後にバレリーナを目指す少女の家庭を描いた『舞姫』という作品も残していたんだ。
バレリーナというと今は一般的だけど、戦後の社会では戦勝国欧米のイメージがどうしてもつきまとう。
それまでは恋や男女の情を中心に描いてきて社会性とは縁遠かった康成の作品の中に、徐々に政治への意識が芽生えてくる作品だと思っているよ。
さて、解説はこんなところだけど、どうだったかな?
一番最初の問題にちょっとマニアックな出題をしてしまったけど、こ んな調子で文学史のクイズを出していくよ。
文学史は大学受験をする際、あまり対策をしてない人が多い分野だと思うんだ。
だけどちょっと勉強すれば満点を取 れる分野だと思うから、これから文学史が出る大学を受ける人は時々覗いてみてね。
あ、ちなみに森鴎外の『舞姫』はバーのダンサーとの恋物語だよ。
最後に答えを書いておこう。
A. 1『蜜柑』、7『羅生門』、10『鼻』(出世作。これで漱石に認められたよ)
B. 2『伊豆の踊子』(初期の代表作)、3『雪国』(中期の代表作)、8『舞姫』
C. 4『人間失格』(太宰治)、5『檸檬』(梶井基次郎)、6『小僧の神様』(志賀直哉)、9『こころ』(夏目漱石)
じゃまた!
*1:言文一致体で書かれてない文章。それまで文章は昔のお手本に沿って書くのが尊(とうと)ばれていたんだけど、明治時代になって、普段の言葉づかいと違う表現で文章書くのはおかしい!って言われるようになったんだ。そして普段の言葉遣いを再現した文章=言文一致体が段々と普及していくんだけど、中には昔の堅苦しい文章=文語で書かれたものもあったというわけ。文語の他には漢文とか書き下し文とかあるけど、これはまた今度。